空のギター
「神保高校の皆さん、今日は本当におめでとうございます!最後の曲は俺達の曲じゃないんですが、五人で選びました!聞いて下さい!!」



 ──Setsunaの口から発せられた曲名に、大きな歓声が上がる。卒業式の定番ではあるが、バンド演奏スタイルでは滅多にお目にかかれない。メンバー達自身も、楽しみに違いないだろう。

 Hiroがキーボードの所へ戻り、SetsunaとRaiseiとKazamiが相棒を構える。Kouyaがドラムの位置に着けば、ラストメロディーが奏でられた。Quintetオリジナルとも言える、迫力ある青春の響き。合唱コンクールなどで歌われる時とは全く違った印象を持たせるものだった。

 主旋律を歌うKazamiに、高めの声を重ねるSetsuna。二人の美しいハーモニーが、体育館にこだましている。力強い演奏に負けない歌声は、卒業ソングを歌っている筈なのに、何処か明るさを思わせる。「勇気」や未来へ羽ばたく「翼」、「希望の風」を、確かに感じさせた。

 Setsunaはギターを弾きながら、体育館をぐるりと見回す。ハンカチで涙を拭く人。友達と抱き合う人。別れの言葉を交わしている人。色んな人が、その瞳に映った。自分も明日、中学を卒業する。そう思うと、目頭が熱くなった。
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