空のギター
「雪那……どっちの雪那も、きっとみんな認めてくれるよ。」

「だよな。そりゃあ最初は色々言われるんだろうけど、黙らせてやれば良いんだって!」

「勿論、俺達五人の音楽でねっ!」



 光夜・風巳・紘が言う。雪那は少しはにかんだように笑い、“Setsunaの声”で「……うん、ありがとう」と返す。感謝の気持ちを込めて歌でも贈ろうかと言い出す彼を、頼星が溜め息混じりに微笑した。



「お前、ほんと歌うの大好きだよな。」



 誰もが頷くであろう、頼星の台詞。雪那は顔いっぱいに笑みを浮かべ、こう答える。



「音楽好きならさ……大好きな曲をクレイジーリピート。それが一番幸せじゃない?」



 頷く四人。その仕草が、彼らが雪那と同じ感覚の持ち主だということを証明してくれた。

 シークレットライブと友情再確認の余韻に浸りながらも、五人は家に帰ることにした。雪那と頼星の卒業式を三人が見に行くという約束をして、「また明日!」で別れる。五つの靴音が、小さく夕暮れに響いた。



「──明日卒業とか、マジで実感ねぇな。」



 薄くオレンジ色に染まった空を眺めながら、頼星が呟く。その隣で、雪那はクスリ、笑みをこぼした。
< 336 / 368 >

この作品をシェア

pagetop