空のギター
 ──神代家には、既に硝子と高藤が居た。四人が現れると、雪那の両親も硝子達も嬉しそうに迎えてくれる。全員は、雪那が生前使っていた部屋の円卓の周りに集まった。



「雪那の部屋……全然変わってないんですね。」

「えぇ……なかなか片付けられなくて。沙雪の部屋も、ほとんど手を付けてないのよね……」



 懐かしそうに言った頼星に、雪那の母親は寂しそうに答える。その笑顔はとても儚げで、頼星達は思わず目を逸らしたくなってしまった。



「そんなことより、皆さんにお見せしたいというか、聴いて頂きたい物があるんですよ。」



 雪那の父親はそう言って、一枚のMDをテーブルにそっと置く。半透明の小さなディスクには何も書かれていないが、誤消去防止のためのツマミがしっかりと動かされている。



「これ……何なんです?」



 即座に硝子が尋ねた。すると高藤が、雪那の両親をまっすぐ見て、全てを悟ったように言う。



「……歌ですね?雪那の。」



 彼らが頷いた、その時──ずっと黙っていた紘が「あの」と声を出した。みんなの視線が向くと、彼はおずおずと口を開いた。
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