空のギター
「そのMD……もしかして、俺と雪那が録音したやつじゃないですか?」



 紘の言葉で、雪那の両親は“やっぱりそうか”と言いたげに顔を見合わせる。軽やかなピアノ伴奏が紘のものだと、薄々感付いていたらしい。



「紘……いつの間に、これ録ったんだ?」



 尋ねる頼星。紘は、小さく笑って答える。



「……クリスマスイベントの日、俺と雪那、みんなよりかなり早く着いてたでしょ?その時に遊びで録ったんだよ!丁度雪那が録音器具持ってたから、二人で意気投合してさ……」



 今更出てくるなんてなぁ、と呟く紘は、何処か嬉しそうだ。それを見た頼星達も、少しだけ笑みを浮かべる。



「僕達、さっき聴いたばかりなんですよ。それで、皆さんにも是非……いや、絶対に聴いて欲しいと思いまして。無理に連絡してしまってすみません。」



 雪那の父が申し訳なさそうに頭を下げる。すると、硝子が首を横に振った。



「とんでもないです!それより、早く聴きましょう。あんた達、聴きたくて仕方ないでしょう?」



 硝子が頼星達四人を見て言うと、見透かされた彼らは深く頷く。雪那の父がMDをコンポに入れると、中身が再生され始めた。
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