空のギター
「──雪那、反則だよ……こんな歌、綺麗な声で歌うなんてっ……」



 一番先に泣き出したのは、紘だった。“自分はいつまでも歌の中に居るから、どうか忘れないで欲しい”。そんな風に聞こえた歌が、みんなの心を打った。



「……最高の、クリスマスプレゼントだな。」

「ほんとだよ……最後までやってくれるよね、雪那は。」



 頼星と風巳が、泣きながら微笑し合う。「雪那はやっぱ凄いね!」と口にする紘に、全員が頷いた。



「俺らに出来ること、何かないのかな?雪那のために……」



 涙を拭って呟く光夜。Quintetを一日限りで再結成するということも考えたが、やはり雪那が欠けているのは嫌だ。どうしたものかと思案している四人。すると、硝子が小さく呟いた。



「……私に良い考えがあるの。みんな、聞いてもらえるかしら?」



 ──二日後のクリスマス。街角が人で賑わう午後八時。ショッピングセンターの巨大スクリーンやお茶の間のテレビでは、全ての放送局で臨時の芸能ニュースが始まった。

 突如切り替わった画面に、人々は困惑する。原稿を持った女性アナウンサーもやや緊張しているようだが、とびきりの笑顔を浮かべて喋り始めた。
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