空のギター
「やったー!じゃあ、お互い頑張ろうね!!」

「とか何とか言って、最初から俺を“ハメる”つもりだったクセに。」



 雪那は嬉しそうに笑い、それを見た頼星は小さくこぼす。「人聞き悪いなぁ」と返す雪那に、頼星は苦笑を見せた。



「まぁ……とにかく良かったよ、お前が元気になって。」

「……ん?」

「お前しばらくギターやめてたし、部活にも来なかっただろ?みんな心配してたんだぞ。」

「……そっか。みんなにいっぱい迷惑かけちゃったし、今度謝らないとね。」



 雪那は眩しそうに空を見上げる。彼女がようやく前を向いて歩き始めようとしていることなどを全て悟った上で、なのだろう。「心配かけさせんなよな」と呟き、頼星は雪那の頭を撫でてやった。



「つーか、よく分かってんじゃん。俺らに迷惑かけたって。」



 嫌味ったらしく言った頼星に、雪那がピシッと顔を固めた。瞬間的に表れたのは、怒り。

 ──マズイ。頼星はそう思ったが、時既に遅し。表情のない顔から声が聞こえた。



「“……何か言った?”」



 ただ、それだけのこと。なのに、その声が酷く恐ろしく聞こえた。オカルト現象には疎い頼星だが、これには背筋がゾクリとなってしまった。
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