空のギター
「……年下だからって甘く見ないで下さい。」

「えっ?」

「私、あなた達にも誰にも負けませんから!!」



 織春はそう言うと、つかつか歩いてセットの奥へと消えていく。予想外の言葉と態度に、五人は言葉もなく、ただただ顔を見合わせるだけだった。



「いやぁ、おっかねぇ……あれはきっとライバル宣言だよ。」



 プロデューサーの一人が幽霊でも見たかのような顔付きで言った。すると、それを聞いていたスタイリスト達も口々に喋り始める。



「あの子、ああいう性格だから大物女優さん達に嫌われてるらしいですよ。」

「私も聞いたわ!『態度が大きすぎるのが気に入らない』っておっしゃってる方も居たわねぇ……」

「五人共、あんまり気にしない方が良いよ。」



 五人は返答に困ってしまい、曖昧に微笑むのが精一杯だった。織春はスタッフ達にもあまり良く思われていないらしい。こんな状況に勿論慣れていない五人は、それぞれ不思議そうな、ポカンとした顔をしていた。

 彼女が悪い子には思えなかったが、あの態度が良くないと思ったのも事実だ。Setsunaは、彼女と握手する筈だった右手をぼんやりと眺めていた。
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