空のギター
 ゴトリという音がして、話者が交代する。



「光夜君……いや、お兄ちゃん初めまして。あたし、妹の絢子(あやこ)です。」

「え、妹?」



 まさか自分に妹が居たなんて。驚く光夜をよそに、絢子は落ち着いた口調で話を続ける。



「お母さんが突然泣き出しちゃってごめんね?あたし達、本当はQuintetがデビューしてすぐの頃にKouyaはお兄ちゃんだって気付いてて……なかなか勇気が出なかったんだけど、山内さんに挨拶しに来て後押しされたんだよね。」

「そっか……みんな元気なんだな。お父さんは?」



 絢子が僅かな沈黙を作る。もしや……と予想を立てた時、再び耳に音声が入ってきた。



「……去年、お別れしたの。お父さん、最後までお兄ちゃんに会いたがってたよ。今度、一緒にお墓参り行ってもらえるかな?」

「そっか……うん、行くよ。」

「良かった!あ、お母さん落ち着いたみたいだから代わるね。」



 絢子の安心したような声の後、再び懐かしい声が光夜の耳を掠める。母親が、ぎこちなく語り始めたのだ。



「さっきはごめんなさい。あなたを施設に預けた理由を、ちゃんと話してなかったわよね……」
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