空のギター
 母の話によると、光夜の両親は祝福される結婚をした訳ではなかったのだそうだ。いわゆる“できちゃった結婚”というもので、現代なら軽く流されることもあるが、当時はあってはならないと主張する人も居た。

 両方の家族や親戚達からは「一族の恥だ」、「どうしてもと言うなら二度と我々の前に顔を見せるな」などと酷い罵声を浴びせられたが、生まれてくる我が子に会うのをとても楽しみにしていた二人は、躊躇うことなく身内と縁を切ったのだった。



「子育てやお金の援助も一切なしだって言われたけど、私達はそれでも良いと思ったの。結婚して可愛い子供を授かって、家族みんなで穏やかに幸せに暮らせる家庭が理想だったわ。
初めの内は、頑張れば生活出来ると思ってたの……でも、考えが甘かったのよね。とてもじゃないけど生活費が追い付かなかった。
だから、泣く泣く光夜を施設に預けたの。ちょっとの間会えなくなることより、死なせる方がもっと辛いから、って……」



 光夜を施設に預ける日、二人は『必ず迎えに来ます』の言葉と共に光夜の名前を伝え、僅かな衣類などと共に彼を園長に託した。この日から光夜は、“こなゆき園”の家族の一員となったのだ。
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