その笑顔に惹かれて
「わっ」
「ほんとだ。手ぇ冷てぇ」
今思えば自分でも有り得ないと思う。
はじめて会った女だし、しかもそこは「周りは皆敵!」みたいな就活中の三次面接試験会場だし。
友人たちからは細身のリクルートスーツ姿ですらホストだなんだと言われて、天性の女ったらしだとか言われてきた。
自分にはそんなつもりも自覚も全然なかったけど、さすがにこの行為には、自分でもちょっと驚いたのは確かだ。
「な、なに?」
「え?…あ、悪ぃ。指先冷てぇって言うから…」
「あ、そっか……ビックリしたぁ」
あまり深く物事を考えないのか、女はまた、へにゃりと笑った。
「此処、絶対入りたいんだろ?」
「え?…あぁ、うん。入りたい」
「じゃ、きっと大丈夫」
何の根拠もなくそう言えば、きょとんとした顔に満面の笑みが浮かんで、彼女の指先が少しだけ熱を持ったのに気づいた。