その笑顔に惹かれて
面接を終えて社屋を出る時に、彼女、 絵梨の姿を探したけど見つけられなくて。
俺はその日から時々、ふと名刺を眺めては、連絡するべきか否か、真剣に迷っていた。
携帯番号の入った名刺を手渡すくらいだから、さっさと電話してしまえばよかったんだ、と思ったのは俺が「合格通知」を受け取った後。
結局、第一希望だといった 絵梨の合否の結果が怖くて、そのまま俺は、事をうやむやにした。
卒業を目前に遊びまくる友人たちを尻目に、俺の心ん中にはいつでもあの時の 絵梨の笑顔があった。
さっさと電話を掛けなかった自分を内心で罵りつつ、ナンパも合コンも飲み会もクラブ通いも何もかも全部が、以前より少し色褪せて見える自分に愕然としながら、俺は大学を卒業したのだった。