私の王様
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これは、夢だ。
私の一番大切なものが、彼だけだった頃の、愚かな、夢。
「いずみくんいずみくん!やくそくだよ?」
「わかってるよ、藤子(トウコ)」
「ほんとう?おとなになったら、ほんとうにいずみくんのおよめさんにしてくれる?」
「もちろん。ほら、約束のしるし」
小さい私の指に、大きな手が伸びて、キラキラと光る指輪をはめる。
「‥‥おっきい‥」
本物であろう綺麗な指輪は、私の小さすぎる指にはあまりにぶかぶかだった。
「大人になる頃には、ぴったりになってるよ。だから、ほら」
泣きそうになる私から指輪を取ると、細い鎖にそれを通し、私の首にかけてくれる。
「すごぉい!」
「それでいつも持っていられるだろ?なくしちゃだめだよ?」
「うん、ずっとずっともってる!」
嬉しくてはしゃぐ私に向けられる彼のやさしい笑顔が、私はずっと、ずっと好きだった。
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