私の王様
「東大寺斎ッ(トウダイジ イツキ)!!!」
街中にそびえ立つビルの中でも、一際バカでかいビルの入り口で、私はお目当ての人物を見つけるなり飛びついた。
ガシッ、という擬音が聞こえそうなくらい彼の腕をしっかりと両手で掴む。
どんなことをしてでも、聞いてもらわなければならないのだ。
溺れる者は藁でも掴む、ってきっと私のことに違いない。
「あ?んだよ水嶋とう‥」
「私とお見合いして!」
彼の訝しげな視線も言葉も無視して、私は決意に溢れた声音で半ば叫ぶように言う。
「‥‥は?」
私に向けられる彼の視線が、冷ややかになるのにそう時間はかからなかったけど。