私の王様
第一章 賭け
「本日はお日柄もよく‥」
「ええ、本当に。二人の未来を暗示しているようですわね」
「そうですねぇ」
カコーン‥と涼しげな竹の音の響く美しい日本庭園を眺め‥ることなく、繰り広げられるお決まりの会話。
高級料亭の一室。
お見合いという名目の下、いかにも高そうな重厚な机を挟んで向かい合っているのは、鮮やかな着物をキッチリと着せられている私、水嶋藤子と、ダークグレーのスーツをバッチリ着こなし、整った眉毛を不機嫌そうに少し潜めた美形‥‥もとい、東大寺斎。
ああ、どうしてこんなことになってるんだろう。
‥‥ううん。望んだのは、他の誰でもない。私だ。
「母さん、そろそろ藤子さんと二人で話したいのですけど」
「あら、そうね。お二人でお庭のお散歩でもしていらっしゃったら?」
「そうさせていただきます。行きましょう、藤子さん」
私の意志など聞くこともなく、既に決定事項であるらしい。
先ほどとは違い、整った顔に完璧な微笑みを浮かべ、私に手を差し出した。
‥‥いや、あなた目が笑ってないわよ、目が。
微笑みという名の脅しに私が逆らえるはずもなく、私はなんとか作った笑顔が引きつっていないことを願いながら、彼の手にそっと手を重ねた。