モテないオトコ
「絶対ですよ!」

 そんなに強調しなくても……

「お待たせしました」

 店員さんが、注文した品を次々と運ばれてくる。

「ここの唐揚げ美味しいんですよー」

 橘さんが、そう言って唐揚げをお箸で掴む。

「そうなんですか?」

「はい。
 ではでは、持内さんあーんは?」

「え?」

「あーんは?」

「いいですよ。
 自分で食べれますから」

 俺はなにを照れているんだろう……
 俺は、ずっとこういうシーンに憧れていたじゃないか……

「ダメですよー。
 素直になってください
 はい、あーんですよ?」

 俺は、静かに口を開けた。
 そして、橘さんはその中に唐揚げを入れる。

「ね?美味しいでしょ?」

「熱い……」

 熱いのは唐揚げだけじゃない。
 顔も熱い。
 これって何度も妄想したシーンだけど、実際にやってもらうと恥ずかしいね。

「あ、ごめんなさい。
 熱かったですよね?」

 橘さんが、小さく笑った。
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