モテないオトコ
 かわいい。
 心のそこからそう思えた。
 女の子ってこんなに可愛いの?
 再び胸の底から熱い何かがこみあげる。

 よく「ドキドキする」と言うけれど……
 実際のところは、心臓の音は「ドキンドキン」だ。

「フライドポテトも美味しいですよー」

 そんな俺の気持ちもわからない橘さんは、無邪気な笑みを浮かべる。

「あ、はい」

 だけど、自分の気持ちを伝えれないまま俺は、フライドポテトを口に運んだ。

「美味しいですか?」

「美味しいです」

 嘘をついた。
 さっきの唐揚げのせいで口の中がヒリヒリする。
 だから、味がわからない。
 そこからどんな話をしたか覚えていない。
 楽しい嬉しい恥ずかしい。
 だけど、いつもよりお酒が美味しく感じた。

「そろそろラストオーダーの時間です」

 店員さんが、そう言ってやってくる。
 腕時計を見ると11時を指していた。

「そろそろ出ます?」

 そう言ったのは橘さんだった。
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