モテないオトコ
 嫌だっただろうな。
 俺みたいな男とデートして腕組やキスまでして……
 1日しか一緒にいていないけど橘さんの優しさがわかる。
 優しいから言えなかったんだ。
 ずっと迷っていたんだ。

 あの時見せた表情は、失意とか失望の顔なんかじゃない。
 言えない情けなさと、そして俺への罪悪感だ……

「つまらん話してもうたな……
 ごめんな」

 笹山さんは、泣きそうな顔でそう言って立ち上がった。

「俺の脊髄をもう一度調べてもらうことって出来ますか?」

 笹山さんは驚いた表情で俺を見ている。
 俺も驚いている。
 どうして、こんなことを言っているのだろう。
 でも、思ったんだ。
 ここで提供しなければ、俺は一生後悔するだろう。
 どうせ後悔するのなら……

「それで誰かが救われるのなら、喜んで提供しますよ」

「ありがとな!」

 笹山さんは、嬉しそうに笑った。
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