モテないオトコ
「あーごめん」

 俺は、小さく誤った。

「ぼーっとしてたら、部長に怒られるで……」

 そっと部長の方に目をやると。
 今にも怒鳴りそうな顔で、俺の事を睨んでいた。

 俺は、我に返り仕事に集中しようとディスクに向かった。
 それでも、やっぱり橘さんの事が気になって仕方が無かった。

「恋は、盲目か…?」

 菊池が、小さく呟いたが、俺の耳には入らなかった。
 仕事をしなくちゃ、仕事をしなくちゃ、仕事をしなくちゃ。
 仕事をしなくちゃ、仕事をしなくちゃ、仕事をしなくちゃ。
 そう思いつつも仕事がはかどらなかった。
 メールアドレスを黙って変更された。
 ただ、それだけの事がショックで仕事が出来なくなる。

 あぁ……
 俺ってメンタル面弱いな。

 そんな事を思いつつ、パソコンで書類を作成した。

 ――時間はあっと言う間に過ぎ仕事終了のチャイムが鳴る。

「ちょっと、この後、付き合ってくれる?」

 仕事の片づけをしていると、笹山さんが声を掛けてきた。

「お前たち、やっぱ付き合ってるのか?」

 菊池が、ニタニタ笑いながら声を掛けてきた。

「んなわけあるか!」

 と、笹山さんは菊池にチョップをしたが、菊池は鮮やかにかわした。

「もうチョップは喰らわんぞ?」

「きー!じゃ、こっちへチョップ!」

 笹山さんは、そう言うと俺の頭にチョップをした。

「痛い…」

「やっぱ、持内君の方が菊池の千倍は可愛ええわ!」

 笹山さんは、勝ち誇ったように笑った。
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