俺様上司は、極上の男!?
櫟課長が平然と答える。


「退職後に娘さんと一緒に服飾の専門学校に通ったそうだ。今は地元でソーイング教室をしている。今回のデザインは娘さんとの合作だ。ムドラ側からリジェクトくらった時点で相談してあった。3日でよく考えてくれたよ。感謝だな」


「思い切ったことをされるんですね」


「俺はあの人のセンスを全面的に信頼している。俺が初めて買った『イカロス』のシューズが、あの人のデザインっていうのもあるんだが。……今回は偶然頼る形になったけれど、かえって良い結果に繋がるんじゃないかと期待している。おまえとしてはどうだ?」


意見を聞かれたので、素直に答える。


「驚きましたけど、デザインは本当に可愛いです。ムドラ側がどう言うかわからないですが、私はこれで行きたいと押すつもりです」


櫟課長がふっと頬を緩めた。


「そうか。太刀川がそう言うなら、嬉しいな」


元同僚の仕事を、まるで我が事のように喜ぶ課長は、柔らかい微笑。
本当に嬉しそうなその顔は、普段の無表情のギャップと相まって、胸がぎゅっと締め付けられるような感覚が過ぎる。
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