俺様上司は、極上の男!?
③
「太刀川、今どこにいる」
スマホの電波にのって剣呑な声が聞こえてきた。
オフィスの番号だったけれど、電話の相手はやはり櫟課長だった。
「成田です」
私は平然と答えた。
「なんで有休とって成田にいるのか聞いている」
櫟課長の声は険しくなるばかりだ。
それもそのはず。
4月半ば、私は有休を取得して成田空港でロサンゼルス行きの飛行機のフライトを待っていた。
ロサンゼルス市内のムドラ本社に向かうためだ。
「ムドラ本社で打ち合わせなら、出張届けを出せ。そして、まず上長である俺を通せ」
「有休の上長決済なら中尾さんにお願いしました。今回は……個人的なリサーチも兼ねるので、有休を取得しただけです。リリさんのご旅行に同行する形になりますので」
私の横にドレッドをヘアバンドでアップにしたリリさんが、キャリーケースに腰掛けている。