俺様上司は、極上の男!?
今回の旅はリリさんがアテンドしてくれることになっている。ムドラ本社での打ち合わせも、本場のハリウッドヨガの世界も。
リリさんもまた、私が進めている案件の協力者だ。ムドラ本部となじみのあるリリさんがいてくれるのは心強い。

当の彼女は、現在私と課長の会話を見守っている。


「話がわからないやつだな」


電波の向こうで櫟課長が苛立っているのが伝わってくる。

私のやっていることは、殿様の目を盗んで、単身敵陣に乗り込もうとしているようなもの。
ひとつ、私が失態をおかせば、今回の新ブランドの件はおろか、今後の取引全体に影響が出かねない。本来なら、課長はもちろん、本部長クラスが同行すべき事案だ。

だからこそ、櫟課長はこの慎重さを欠いた私の出奔を怒っているわけだ。


「担当者は私です」


私ははっきりと言い切った。通常なら絶対通らない文句をつきつけて、話を打ち切ろうとする。


「お叱りは帰国しましたら必ず受けにあがります」


< 241 / 284 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop