俺様上司は、極上の男!?
「只今帰りました」


私はまず、櫟課長に向かって声を張った。
狭いオフィスには私と彼しかいない。

大声なんか出さなくても充分聞こえる。
だから、この挨拶は私の誠意。


「楽しかったか?アメリカ旅行は」


櫟課長がパソコンのディスプレイから顔をあげずに言う。

不穏な空気。ひりひりと痛いくらいざらついた言葉。


「はい、大変充実していました。勝手なことをしまして、申し訳ありませんでした」


私の慇懃無礼な言葉に、櫟課長が立ち上がった。
整った無表情な顔は凄みを感じさせる。
デスクの横に出ると、そのままずんずんと私に近付いてきた。

私は身が竦み、思わず鞄をどさりと床に落としてしまう。
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