俺様上司は、極上の男!?
「大量生産できるキャパはないので、まずは秋リリースに併せて限定発売のかたちにします。まずは1000個、初回受注を……きゃっ」


説明は最後までできなかった。
櫟課長が私を強引に抱き寄せたからだ。
私はつんのめって、櫟課長の胸に不恰好に飛び込む。


「自意識過剰、意地っ張り、勝手、自己管理力皆無。こんな女、見たことない」


彼の腕の中で、不本意な罵倒をされる私。
抱き締めておいて、それはないんじゃないかなぁ。


「あの、課長……」


「どうして、俺に話さないんだよ!どうして頼らない?」


櫟課長の肩に顔を押し付ける格好で、彼の表情は見えない。
でも、課長の声は苦しげで切なかった。


「私がやらなきゃ、意味がないと思ったんです。課長が復讐心を原動力に日々を過ごすなんて嫌だったから。……せめて、大事な人たちと一緒に、また仕事をしてほしくて……。橋渡しになりたかったんです」


言いながら、課長の香りに胸が苦しくなる。
ああ、この人が大好きだ。あらためて切なく思った。
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