初めて会う従兄弟は俳優でした。
梅雨もまだ抜け切れてない
蒸し暑い頃。
私は、ひいおばあちゃんの家に来ていた。
「さぁさぁ龍斗くんに挨拶してきなさいっ」
「ふがっ」
お餅を喉に詰まらせる私。
今日は、ひいおじいちゃんの七回忌であり、親戚が一堂に集まっています。
「ちょ...ごふっ。だ、誰よ」
一瞬、龍斗くん何て言うから、いつも私がキャーキャー言ってるの聞きすぎて名前までついに間違え出したのか、お母さん。
「龍斗くんよー。従姉妹の」
「いとぉこぉ〜?」
今度はご飯を頬張りながらお母さんに問いかける
従兄弟なんかいたの?
いや、
お父さんの弟さんとは面識あるし、結婚していることも知ってるし、従兄弟がいてもおかしくないけどさ
いや、龍斗くんとおなじ名前なんて
奇跡か!これは!
「...いとこってことは、山崎龍斗くん?」
「...そうよ?いねこー。忘れたの?頭大丈夫?もぅっ」
さぁ来なさい。と私に手招きをしたお母さんは、広いひいおじいちゃんのお屋敷の奥へと歩く。
私も、なれないスリッパをパタパタさせながら木の古い匂いがする廊下を行く。
「あっらぁ〜奥さん!!」
「あらー久しぶりねー龍斗くんはいはる?」
「いるわよ〜七回忌でやっとひいおじいちゃんに会えたって喜んではるわ」
どうやら、従兄弟の母親、
まぁつまりは、お父さんの弟さんの奥さんと、ばったり会ったようだ。
「こ。こんにちわ。いねこです。山崎いねこ。」
「あっらぁ〜!!可愛らしくなって〜前まであんなにちっちゃかったのに!」
「えぇーそうよーもうおかげさまで高校生よー反抗期で憎たらしいわー」
「うちの子なんか、もう反抗期なんか通り越して無口よー。やっとここに来て声を聞いたわー」
あらっ〜やだわー
なんてまぁ、立ち話が長い長いこと。
ってか、反抗期のこと必要ないでしょお。
お母さんが、龍斗くんの舞台のチケット間違って捨てたからじゃん。
あぁ、思い出したら涙が。
「ちょ、お母さん、どこなの。もう」
涙がほおをつたいそうだったので必死で黒いワンピースの袖で拭う。
「あーここよ。今いいかしら?」
「中に龍斗がいるけど、まぁ向こうも高校生だし、なにかといねこちゃんと気があうわ。仲良くしてくださいな」
ニコリと笑った奥さんは、とても可愛らしくて綺麗で、誰かによく似ていた。
「っと!奥さんっ!おじいさまの件でねーーーー」
って......おいおい、お二人とも話しながらどっか行っちゃったよ。
一人でこの扉開けろってこと?
え?一人で挨拶?
「...まじで」
いや、高校生だから馬が合うとかなんとか知らないけど
知らない初対面の男女の高校生が会って
意気投合なんて、
人見知りの私には無理です。
.......いや、でも
廊下寒いし。
はやくあったかいとこ行きたいし。
戻ればいいんだけど、お屋敷広すぎるし。
ここどの辺りかもわからないし。
なにこれ。
「あのぉー」
っと、扉の向こうに投げかけてみるが応答なし。
すごく従兄弟の龍斗くんって愛想悪いじゃん!
いや。もういい。
廊下は寒い!
ここ分からない!
向こうは返答なし!
きっと私なんかどうでもいい!
私も従兄弟の龍斗くんなんてどうでもういい!
よしっ
ひと思いに
ガチャ
やろう。
と、勢いつけて扉を開けた私ですが
「っ!!!!!!!!?????」
ソファでスースーと寝息を立てる彼に
息を飲んだ。