初めて会う従兄弟は俳優でした。
だってさぁ。
龍斗くんsaid
俺の手当てをしたいと
震える手で俺の部屋を訪ねてきた彼女。
小さなか細い手は、
俺の手を優しく包み込んだ。
決めた。
俺は、君に恋をし続けよう。
彼女を、連れ去る1日前。
俺は、携帯を取り出すと、引っ越してきたばかりの殺風景な部屋に腰を下ろした。
「俺、今度の九州コレクションズ、出ます。」
電話の先は、俺のマネージャーの
佐々木。
「お!出る気になってくれたかぁ〜よかったー!」
歓喜に沸いた彼の声が耳に響く。
九州コレクションズとは、モデルが長いランウェイを歩くという大きなショーだ。
俺はメンズモデルとして出て欲しいという依頼を前からいただいていた。
「.....いや、気持ちは、出たくないんですけど、彼女と一緒なら。」
ぼつりとつぶやくと、
俺が出たい理由に、おそらくぽかーんと口を開いているであろう
佐々木からの返事はしばらく
こなかった。
「....おーーーーい。佐々木さーん」
「-!あ!いっ!?え!?
彼女ぉ!?」
おいおい、お前それはやばいって
と慌てる彼に俺は続けた
「出たい人がいるんです。出なきゃいけない。」
「いや、落ち着け、龍斗の彼女......っていうことか?」
大きく深呼吸が聞こえてくると
おれはクスリと笑った。
彼女......
そうなれたらいい。
いずっと願った。
俺の隣で君が笑ってる姿を。
強く彼女を抱きしめても
嫌がらない君を。
「彼女、モデルなんです。俺の事務所のモデルさん。だから、一緒にランウェイ歩かせてください。」
俺がそう口にすると
こまったのかまた黙り込んだ佐々木。
.......これは真っ赤な嘘だ。
彼女がモデルなわけでもないし
事務所にいるわけでもない
だけど.....俺は君が笑って欲しいから
彼女は心から笑顔になって欲しいから
「.....まぁ、まぁ....あの社長が懲りる理由を作るんだな。」
その言葉で切れた電話。
佐々木、分かったのか。
「...ういっす。」
俺は君を必ず幸せにしてみせる。
どんな強引な方法でも
明後日は九州コレクションズ
......きみを救いにいく。