初めて会う従兄弟は俳優でした。





俺は、彼女が困惑する中で社長に話をつけようと思った。


.....彼女は絶対拒むと思うから。





『社長が納得する答えを考えるんだな』




佐々木が言った言葉を成し遂げたかどうか分からない。


少しばかり、いや、かなり汚い手を使ったが、俺は彼女を個々の事務所に入れたいんだ。




きっと社長も折れる。


絶対に俺の思い通りにさせてやる。





彼女の夢を.....叶えられる。
















だと思ったのに、


おれは、強引に狭い廊下で彼女に欲求をせがんでしまった。



意味のわからないことを口にして
彼女を傷つけた。



『付き合って、俺のモデルになれ』



今すぐにでもこの子が隣に欲しいと願胃が強く出てしまった。




咄嗟に口から出た言葉は



いねこを驚かせ、深く考えさせた。



そして......俺を最低だと憎む結果にたどり着いてしまった。



......俺は、俺は...


君がただ、隣で笑ってほしかった。


そばに欲しかった。



俳優、モデル。



俺の職業は、キラキラしたもので

願ったら、だいたいは手に入るし
解決もしてくれる。




.......だけど、本当に欲しいのは
この、




泣いているいねこなんだから。





「付き合って...ください。」




小さく、首を回した彼女と
バチリと目が合う。




「はぁ?」




俺は、素直になれない。




胸につっかえるような苦しさを感じながら、低い声でバカにするように

いねこを見下した。




「....あ、え」



上目遣いの彼女は段々と自信なさげに顔を下げて





ポタポタと雫を落とした。






「...ご、ごめんなさい。あっ...間違いでした。」





あまりにも震えるいねこの体を、
俺は、力強く払った。





「.....ふーん。じゃあ、なんで泣いてんの。迷惑。なに?」



俺の彼女に対する態度が


自分でも最悪なんだってことはわかってる。



ここに連れてきたのも俺だし、



だけど、


まさか、





こんな簡単に

付き合ってくださいなんて


言ってくるなんてよ......。





あんな可愛い顔で。




「あ、あなたが悪いんじゃないんで....すか。」





そうだ。俺が悪い。





だけど、他にもそんな顔を見せているのか。



あっさり告白を受けるのか。



複雑な自分勝手な解釈の俺に

気分が悪くなる。





「.....いねこって、案外たらしなんだね」





「ぇ。」





「嘘だし。俺が言ったこと嘘。なにまにうけてんの。従兄弟だからって近づけたと思うなよ。」




「.......。」





黙り込む彼女の頭を俺は震える手で撫でる。




言ってることと行動が比例しない。




「そんな簡単に男にホイホイついていくんじゃねーよ。言い寄られたら、はいはいいってんじゃねえよ。」




たぶん......これは俺の嫉妬の部分。


そんなこと、言われたら一番、戸惑うに決まっているのに




「......いいから。こい。」




「ぇ。」






俺も、自分でなんていえばいいのかわからないんだ。



だって、こんな可愛い子を目の前にして

正論をぐだぐだ述べるなんて時間が勿体無いし。



悪いことをしたのはわかってる。



それは、君が俺みたいな最低な奴に普通に引っかかっちゃうところが悪いんだ。





『彼女にしてください』




吐き気がした。


可愛すぎて。


反則すぎだと叫んだ。




......他の男に絶対言うなよ。

っていうか、もう言わせねぇ。



俺のもんだって。
言わせたい。



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