良い子とは呼ばせない
「――って、まどか大変!面談の時間、もう5分も過ぎてるよ!」


ふと壁にかかった時計を目をやった私は、針の指す時間に驚いてまた大声をあげてしまった。
しかしまどかは全く慌てる様子を見せず、


「あー……本当だ。めんどくさいなあ、今日はもうやめとこ」


と言い出した。



「ダメだよまどか!先生時間とって待っててくれてるんだから!」



こういうときになだめるのが、小学校の頃からの私の役割。
まどかは「いやだなー」とやる気なさそうに立ち上がり、写真集をもとの棚に戻した。



「わざわざ怒られにいくなんてバカみたいだよー」
床に置いていた鞄を肩にかけながら、彼女はそう呟く。




「いつも先生の説教を振り切ってるんだから、たまには怒られてあげなさい」と私は諭し、彼女の腕を握って図書室の外に引っ張りだした。


まどかの背はクラスで一番低い。
私は平均並みの身長だけど、隣に並ぶと頭1つ分ほど身長の差が生まれる。
だが、クラスの中で一番パワーが溢れているのも彼女だったりする。
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