良い子とは呼ばせない
「……工場?」



そこに広げられていたのは、巨大な工場の写真。
複雑に絡み合った鉄パイプに、どっしりとそびえ立つ煙突。
まるでSFに出てくる近未来を再現したかのような写真に、私は思わず息を呑んだ。



「超かっこよくない?これ、詳しく見たらすぐ近所の工場なの。こんな世界がすぐ近くにあるなんて、私知らなかった……15年も生きて来たのにだよ?悔しいなあ」



興奮した様子でまどかは話す。
写真が絡んだときの彼女はとても生き生きとしていて、私はそんな彼女を見るのが大好きだった。



「まどかは写真家になりたいんだよね」



これまでに何度も尋ねた質問。



「そう!絶対なる!」



だけど私は、このまどかの気持ちいいくらいに潔い返事が聞きたくて、繰り返し繰り返し尋ねてしまうんだ。



その潔さは、私のどこを探しても見つからないものだから。
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