腹黒王子の取扱説明書
「あっ、待って! すみません」

私も慌てて席を立ち、専務達に向かってまたペコリと頭を下げると、杏子と一緒に食器の返却口に向かった。

専務のお陰で、私達はかなり注目を浴びたらしい。

周りにいる女性社員の視線を感じた。

ちょっと悪意が込められているようで怖い。

あのまま専務の横にいたら、きっと何か嫌みを言われたかもしれない。

「どう、専務と初めて話した感想は?」

杏子が面白そうに私に聞いてくる。

「…話したって言っても自己紹介しただけでしょ。私をあの場に置いていく気だったよね? あそこにずっといたら生きた心地しないよ」

私は杏子に恨みがましい視線を向ける。

「ふふ、でしょう? 完璧すぎるのって案外気疲れするのよ」

杏子が意地悪な笑みを浮かべる。

「だからって私を生け贄にしないでよ。裏切り者」

私は唇を尖らせながら、杏子の背中を軽くポンと叩く。
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