腹黒王子の取扱説明書
他人には決して関心を示さない俺らしくもない。

「……まあ、良いわ。これからは公私共に麗奈に癒してもらうのね」

フッと微笑して、杏子がすたすたと専務室を出ていく。

彼女と入れ違いに須崎が入ってきた。

「相変わらずだな。兄妹なんだからもっと本音で話せば?」

「ずっとこうしてきたんだ。今さらそう簡単に変えられないよ」

「それで、俺をいじめて息抜きか?」

須崎がニヤリとする。

「明日から息抜きの相手も増えるし、お前の負担も減るよ」

俺はクスッと笑う。

「何故中山さんを選んだ?」

「……彼女なら自分のテリトリーに置いてもいいと思った」

それは、素直な自分の気持ちだ。

そして、自分の側に置いておきたいって思った。

自分の秘書にまでしたのに、自分がどうしたいのかわからない。
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