腹黒王子の取扱説明書
ただ、麗奈が気になる。

彼女を見るとそのまま目で追ってしまう。

麗奈の複雑な事情をちょっと知ってしまったからかもしれない。

今朝、彼女の弟から父親の様子を伝えるメールが来たが、あまり病状は思わしくないらしい。

朝家を出る時彼女はまだ寝ていたが、この事を知ったらどうするだろうか?

「それはかなり貴重だな。俺は地球上にはそんな女、一人もいないと思ってたがな」

地球上ってそこまで言うか。

「お前も言うね」

俺は苦笑する。

「それで、昨日は彼女とどんな夜を?」

須崎がニヤニヤしながら俺に聞いてくるが、俺は平然と答えた。

「普通に看病しただけ。お前が期待するような事は何もないよ」

「普通に看病ねえ。明日は雪でも降るんじゃないか?」

須崎が俺に疑わしい視線を向ける。

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