腹黒王子の取扱説明書
「からかうなよ。それより、今朝頼んだ中山麗奈の事、何かわかったか?」

彼女の家庭の事情が気になる。

あのままあのバイトを続けさせるわけにはいかない。

高級クラブでも所詮は水商売だ。

悪い客に身体を触られる事もあるだろう。

もうあんな仕事、やらせたくない。

たいした情報はなかったのか、須崎は書類も見ずに麗奈の情報をすらすらと口にする。

「実家は千葉で、母親が五年前に病気で死亡、父親は去年の夏脳溢血で倒れて以来半身不随で施設に入っている。大学三年の弟が一人いて、彼女は経済的に苦しくて母方の伯母が経営するクラブでアルバイトしている」

「母親もいないんだな。父親も今肺炎で入院しているし、いい状態とは言えないな」

麗奈にはかなりつらい状況に違いない。

「驚かないんだな。知ってたのか?」

「多少ね。弟には昨日会ったよ」

品行方正な優等生タイプの青年だった。
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