腹黒王子の取扱説明書
「あんたって意外と現実的よね」

叔母が呆れたように言う。

「夢だけじゃ生活できないのは銀座でママやってるんだからわかるでしょう?」

夢見てお金が稼げるのならこんな苦労はしない。

「あら、現実が残酷だから夢をみるのよ」

叔母はフフッと笑う。

勝手なことを言って……お願いだから私を巻き込まないで欲しい。

「こないだの夜の残業代もらいますからね。忘れないでよ」

残業代よりも、俊の家からうちまでのタクシー代の方が高いかもしれない。

初めて専務のマンションに泊まったとき、会社もあったから仕方なくタクシーで帰ったけど、五千円もタクシーの運転手に支払ったのは痛かった。

普通に家に帰ってればあんな事にはならなかったのに。

つくづくついてなかったんだと思う。

何のためにバイトしてるのかわからない。

じっと家にいた方が良かったという気さえする。
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