腹黒王子の取扱説明書
「すみません。私はまだ見習い中で。お飲み物は何にしますか?」

「いつもはウィスキーなんだがね。ナナちゃんとシャンパンで乾杯するのも良いかな?」

井澤さんがどさくさに紛れて、私の太ももに手を置く。

……早速触ってきた。

このスケベ親父!

しかも、頼むのはうちで二万の安物シャンパン。

「モエシャンの白にしようか?ピザでも食べながらナナちゃんの事をもっと知りたいな」

スケベ親父が私に顔を近づけて耳元で囁く。

彼の口臭に耐えられず、私はついに顔をしかめた。

一流企業に勤めてるくせにケチだし……。

マリさんがこの親父の隣に座らなかった理由がわかった。

口臭も臭くて、身体にまで触るくせに、安物の酒しか頼まない。

まだ、俊の方がずっとマシな客に思える。

ああ、彼の事を思い出すのはよそう。

ブンブンと私は頭を振る。
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