腹黒王子の取扱説明書
「こんなドレス着たまま外に出たくありません。それに財布だってロッカーにあるし……」

私は彼の手を思い切り振り払って立ち止まる。

「俺は会社に麗奈のバイトの事を言ってないけど、奨励した覚えはないよ。どうして会社は休んだのにバイトには出てるのかな?」

「それは……」

一難去ってまた一難。

あのスケベ親父から助けてくれたのには感謝するけど、早く私の前から消えてくれないだろうか。

俊が側にいると生きた心地がしない。

「上司には答えられない?早く着替えてきたら?」

「あのう、助けてくれてありがとうございました。一人で帰れますから……」

だから、早く帰って。

私は心の中で懇願するが、俊がここを立ち去る気配はない。

「大丈夫だよ。今夜はちゃんと家まで送るから」

俊が意地悪く笑う。

全然大丈夫じゃない。

むしろ大迷惑!
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