腹黒王子の取扱説明書
放っておいてくれればいいのにどうして私に構うのよ。

こんなバイトをしてるからからかってるわけ?

私はムッとしながらロッカールームにかけ込み、自分のロッカーの前にもたれながらフウーッと一息つく。

また高熱出しそう。

俊と顔を合わせたくなくて横にあるパウダールームに移動してゆっくり着替え、濃い目の化粧も時間をかけて落とす。

二十分後にロッカールームを出て裏口からこっそり帰ろうとすると、俊が非常階段の踊り場のところにいて私を見ると悪魔のように微笑んだ。

「お疲れ様。長かったね」

……完全に私の行動読まれてる。

これじゃあ、逃げられない。

私は俊をギッと睨み付けた。

だが、彼は私に素早く近づいて私の行く手を遮る。

ここは人気が少ないし助けは呼べない。

素直に表から出れば良かった。

「逃がさないよ。俺が助けなかったらどうなってたと思う?」

俊が謎めいた視線を投げるが、私に答える隙を与えずに彼は私の顎を掴む。
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