腹黒王子の取扱説明書
昨夜彼にタクシーで送られた後、いろいろ考えた。

あんなキスされたけどあのエロ親父から救い出してくれたんだから、ちょっとは良いとこあるのかなって……。

でも、やっぱり俊は自分以外の人間が私を苦しめるのが嫌だっただけなんだ。

あの男に良いとこなんてない。

あんだけいろいろ考えた時間を返して欲しい。

私って……馬鹿よね。

「中山?」

突然声をかけられてビクッとした。

どのくらいここにいたのだろう。

どうやら私は時間も忘れ、彼の足音に気づかないほど動揺していたらしい。

声の主は私と同期の寺沢君だった。

「こんなとこでどうした?」

「ち、ちょっと身体がふらふらしちゃって……」

泣いていたのがバレているかもしれないけど、私は額を押さえながら苦しい言い訳をする。
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