腹黒王子の取扱説明書
前田先生……私を置いていかないで!

和紅茶だってまだ残ってるじゃないですか!

お願いだから、私を俊と二人きりにしないでよ。

前田先生が去っていったドアを何かにすがるようにじっと見ていると、俊の視線を感じた。

……目を合わせなきゃいけない?

でも、あんな酷いこと言われたんだよ。

今すぐなんて無理‼

私は現実逃避したくてぎゅっと目を閉じる。

これは……夢よ。

そうよ、私は悪夢を見ているのよ。

「あんなひどい事を言って悪かった」

俊の口から出た意外な言葉に驚いてパッと目を開ける。

今、何て言った?

悪かったって……空耳じゃないよね?

確かにそう聞こえた。

それに……なんか聞き覚えあるような……ないような。

デジャブ?

絶対に彼が言うはずのない言葉なのに……今初めて聞いたわけではないような気がするのはなぜだろう。まさか…ね?
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