腹黒王子の取扱説明書
私が黙り込んでいると、俊は更に続けた。

「やり直さないか?」

「やり直す?」

「俺が杏子の兄で、麗奈が杏子の親友。夜のバイトはなかった事にして、あの食堂で会った後からやり直す」

何を勝手な事言ってるの?

自分の気分でコロコロ変えないで欲しい。

悪かったの一言だけで今までの事全部水に流せるわけがない。

俊が許せなくて私は声を荒げた。

「……それで何が変わるんですか?やり直すならただの上司と部下で良いじゃないですか!」

私の言葉に俊がもっと言ってくるかと思ったけど、意外にも彼はあっさり引き下がる。

「わかったよ。君の認識はそれでいい」

「それならもうキスとかするのは止めて下さい」

「麗奈がして欲しいって言うまでしないよ。約束する」

俊が何故か勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

誰がそんな事願うもんですか!

「一生言いませんから。それより、まだ役員会議のはずでしょう?」

どうして医務室にいるのよ。
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