腹黒王子の取扱説明書
「頭痛がするって言って抜けてきたんだ。どうせ下らない話だし、須崎も置いてきたしね。麗奈は泣いてたし、素直に秘書室に戻らないって思った」

……この勘の良さ。

医務室じゃなくトイレにでもこもってれば良かった。

「麗奈の涙が気になって会議どころじゃなかった」

俊が私に近づき、右手を差し出して私の頬にそっと触れる。

心臓がドキンとした。

俊の瞳から目を逸らせない。

彼の目が真剣で、いつになく本心を告げているような気がする。

ううん、騙されちゃいけない。

「まだ目、腫れてるね。それじゃあ、まだ人前に出れない。行くよ」

俊が私を椅子から立ち上がらせ、手を掴む。

「行くってどこに?」

「もうすぐお昼だし、外に食べに行くよ。人目を気にしないですむ良いとこがあるんだ」

私の手を掴んだまま俊が歩き出したが、私は立ち止まった。
< 151 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop