腹黒王子の取扱説明書
「否定しなくてもいいですよ。社内で専務にお姫様抱っこされたのに。昨日だって専務と一緒にラブラブランチだったんでしょう?玉の輿だし、いいなあ。今度、専務の友人紹介してくれませんか?」

「だから、違うよ。でも、専務の友人なら、今医務室にいるよ」

前田先生がね。

「医務室って、産業医の先生ですか?」

「臨時だけどね。でも、止めときなさい。女ったらしだから」

杏子が口角を上げる。

「でも、イケメンですか?」

美月ちゃんの目が期待でキラキラと輝く。

彼女はどうやらイケメン好きらしい。

「うん、イケメンで優しいよ」

私がにっこり微笑むと、美月ちゃんはフフっと笑った。

「じゃあ、生理痛だって言って薬もらいに行こうかな」

「仕事忘れないでよ。ほら、無駄話はもうおしまい」

杏子がパンパンと手をたたいて話を終わらせる。

それから、スケジュール帳に書いたメモを見ながら車やお弁当の手配を済ませ、溜まっていたメールも一気に処理して業務をこなしていくと、あっという間にイギリス支社とのテレビ会議の時間になった。

まだ拙い英語で向こうの秘書と電話でやり取りしながらテレビ会議システムを起動させる。

海外とつなぐのは初めてだったから、ちゃんとつながるか不安だった。
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