腹黒王子の取扱説明書
「え?私?」

そんなバトン急に渡されても困るよ。

「わかった。須崎、頼んだよ」

余程辛いのか、俊が須崎さんの顔も見ずに会議室を出ていく。

私がどうしていいかわからなくておろおろしていると、須崎さんが声を出して笑った。

「こっちは大丈夫だ。あいつ送ってやってくれ。かなり弱ってるし、おもしれーもの見れるかもしれないぞ」

面白いものって……。

ただ、風邪で弱ってるだけじゃない。

仕方なく会議室を出て専務室に行くと、俊が目をつぶりソファーに横になってた。

「専務、ここで寝ないで下さい!」

俊の身体を揺するが、彼が起きる様子はない。

「もう専務、寝るなら家で寝て下さい」

「嫌だ。俊て呼ぶまで帰らない」

突然腕を捕まれ、俊がパッと目を開き私の瞳を見据える。

心臓がドキンとした。

寝た振りしないでよ。
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