腹黒王子の取扱説明書
「あっ、すみません」

私は駆け寄って外国人のお客さまの隣に座ろうとしたが、叔母さんが首を横に振って専務の方に目をやった。

ええ~、専務の隣?

最悪……。

専務と外国人のお客さんの間にいた叔母さんは立ち上がって、外国人の方の端に座り直す。

私は笑顔を貼り付けて、専務に今日二度目の挨拶をして頭を軽く下げる。

「ナナです。よろしくお願いします」

どうかバレませんように。

恐る恐る上を向くと、専務はいつもの爽やかスマイルを浮かべていた。

バレてないかも。

これは、大丈夫かもしれない。

でも、いつもニコニコしてて専務は疲れないのだろうか?

専務の隣に座り、彼のグラスに目をやるともうすぐ空になりそうだった。
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