腹黒王子の取扱説明書
彼女の意外な反応にびっくりした。

顔を背けて家に帰ると思った。

「今何時だろ?」

麗奈がキョロキョロと時計を探すので、俺はチラリと壁時計に目をやった。

「ご…五時」

答えてやるがやっぱり上手く声が出ず、思わず顔をしかめる。

「喉辛そうですね」

麗奈はサイドテーブルに置いてあるスポーツ飲料をつかむと、蓋を開けてコップに注ぎ俺に差し出した。

「どうぞ」

素直に受け取り、口に運ぶ。

ゴクゴクと飲み干すが、喉のイガイガはなくならない。

「お腹空いてます?お粥とか食べられますか?」

麗奈がいつになく俺に優しい眼差しを向ける。

いつも敵対心剥き出しなのに……こう優しくされると調子が狂う。

「な…何で帰ら…なかった?麗奈だってまだ風邪完治してないよね。また、熱出たらどうするの?」

麗奈の質問には答えず、気になった事を彼女にまず確かめる。
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