腹黒王子の取扱説明書
「放置してそのまま帰ろうとも思いましたけど、私も一応看病してもらったし……借りを返したかったんです。それに、何か弱味を握れればって思って。やられっぱなしでは癪ですから」

麗奈が俺を見て悪戯っぽく笑う。

彼女がこんな風に笑える事にまず驚いた。

いつも怒らせてばっかりで……こんな笑顔見た事なかったな。

「律儀な性格」

俺は独り言のように小さく呟く。

だが、麗奈には聞こえていたようだ。

「よく言われます。それで…何か食べられそうですか?」

「ああ」

「じゃあ、作ってくるので待ってて下さい」

にっこり笑って麗奈が部屋を出ていく。

あんなに俺の顔を見るのも嫌がってたのに、どういう心境の変化だろう?

弱い者を見ると放っておけない質なんだろうか?

それなら、しばらく辛い振りをしてみるか。

他の男でも弱っていたら同じ事をする?

そう思うと胸の中がモヤモヤする。
< 171 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop