腹黒王子の取扱説明書
「お酒、また水割りで良いですか?それとも、何か別のもの用意しましょうか?」

「せっかくナナちゃんが来てくれたんだから、そのピンクのドレスに合わせてドンペリのロゼでも頼もうか」

専務が私の目を見てにっこり微笑む。

ドンペリのロゼ……。

一本十八万円也。

いつもなら大喜びするとこだけど、今夜は素直に喜べない。

つい本人に確認してしまった。

「…本当にいいんですか?」

今夜の領収書、金額が高過ぎて接待費で落とせませんよ。

「普通、ボトル頼んだら喜ぶとこじゃないかな?それとも、僕の財布の心配をしてくれてる?ナナちゃんは優しいね」

専務がクスッと声を出して笑う。

「じゃあ、本当に頼んじゃいますよ」

私は立ち上がって、近くにあった内線でシャンパンを頼む。

三分も経たないうちに黒服のお兄さんがシャンパンとグラスを持ってきた。
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