腹黒王子の取扱説明書
私がグラスにシャンパンを注ごうとボトルに手を伸ばすと、専務の手が伸びてきて先にボトルを掴み私の手は空をさ迷った。

「女の子に重いもの持たせるわけにはいかないよ」

専務が柔らかな笑みを浮かべる。

「でも……これは私の仕事で……」

これじゃあ、どっちが客かわからないよ。

私がホストクラブにいるみたいじゃない?

私が戸惑っている間に、専務は慣れた様子でグラスにシャンパンを注ぐと私に手渡した。

それから、外国人のお客さんと叔母さんにシャンパンが行き渡ると、専務は私の目を見ながらグラスを掲げた。

「ナナちゃんとの出会いに乾杯」

専務の目が悪戯っぽく光る。

その言葉に、私の頬がボッと火がついたように真っ赤になる。

格好いい人って、キザなセリフ言っても痛い人にはならないよね。

ドキッとするようなこと言われたからって、本気にしてはいけない。
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