腹黒王子の取扱説明書
私……何かやらかした?

考えても何も思い当たることがない。

杏子も美月ちゃんも私を冷やかすような視線を投げてくるが、今は構ってられない。

この状況だと逃げられない。

渋々自席から立ち上がり俊の元まで行くと、腕を捕まれそのまま引きずられるようにエレベーターに連れ込まれた。

「ちょっと、いきなり何ですか?」

「何ですかじゃない?何で病院にすぐ行かない?」

俊がスマホを掲げて私に見せる。

そこに映し出されたのは、弟の海里からのメールだった。

【父が危篤なんですが姉と連絡が取れないので、会社で会ったら病院に行くよう伝えて頂けないでしょうか。】

何で寄りにも寄って俊にメールなんか……。

海里の馬鹿‼

「父親が危篤なのに何で黙ってた?ここで仕事してる場合じゃないだろ?」

俊が恐い目で私を睨み付ける。

「私の家族の問題です。専務には関係ありません!」
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