腹黒王子の取扱説明書
17、溺愛? ー 麗奈side
父が亡くなって一ヶ月経った。

三週間前に届いた秘書課の赤と黒のチェックの制服にもあまり違和感を感じなくなったし、俊との仕事にも慣れてきた。

もう俊は最初の頃のような蔑むような視線で私を見ることがなくなった。

朝の申し送りは今日こそ自分のペースで進めるんだから。

毎日そう意気込んで挑むが今のところ十六戦全敗。

「今日の川越工場の視察、十三時に配車します。他に何かあります?アメリカ出張に同行しろって言うのはなしですよ」

「言うようになったね」

俊が余裕の表情でフッと微笑む。

「私が同行しても経費の無駄遣いです。須崎さん一緒なんですから、二人でしっかりお仕事お願いします」

「じゃあ、今夜は?」

「杏子と先約があるんです。ファイルの整理も終わってますから、今日は残業しませんよ。悪しからず」

「ふーん、先手を打ったつもり?俺がいなくて寂しくなっても知らないよ」
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