腹黒王子の取扱説明書
その話は初耳だ。

……あの男、海里まで上手く丸め込んで……。

私で一生遊ぶつもり?

「……なんか頭痛がしてきた」

私が額を押さえると、杏子が言った。

「兄は浮気はしないと思うし、収入もあるしお買い得だと思うわよ」

杏子が楽しそうに私をからかうが、私は笑えない。

「……私にだって選ぶ権利あると思うけど……。それにうちの女子社員敵に回したくない」

「……まだ、何かされてるの?」

杏子が心配そうに私を見る。

「……仕事では意地悪されなくなったけど、ロッカーに置いてた私物がゴミ箱に捨てられてたりとか……地味な嫌がらせがまだあるの」

俊の秘書になってから彼を狙う若い女子社員から恨まれるようになった。

重要書類が私のとこに届かなかったり、嘘の打合せの設定をさせられたり、私の目の前でわざと私の噂話をしたり……。
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